クローン人間の問題点 最期に正義はない

ジョバンニはパパと妹のルーラが乗った車を見送った。

ジョバンニがルーラを見た最後だった。

パパはルーラにせがまれて近所の山に汽車を見に行った。架橋からみる景色と下を走る汽車の合わせ技は絶景で、遠くからも鉄道ファンが写真を撮りにくるほど。パパたちがいつものように架橋から見下ろすと線路の補修をしている作業者が6人いた。パパは不安に思いつつも汽車を待っていると、パパの予想は的中した。汽車はなにも知らずに勢いを緩めずやってくる。あたりにある小石を投げたり手を振ってみるも汽笛を鳴らすだけで止まりはしない。振り向くと汽車に気付いた作業者が逃げているが、作業場所がちょうど崖沿いの単線で両脇は登り下りの急斜面。降りることも登ることも間に合わず、待避所までも間に合いそうにない。


パパはルーラを落とした。


ルーラは名前によらずそのまま落ち、驚いた汽車の運転手はやっとブレーキを踏んでくれた。

ただ、ルーラは死んだ。

作業員たちはとても喜んだが、彼らがクローンだったことを知ってパパは残念がった。

ルーラの最後の言葉は「運命は意外と早くくるものね。」だったとパパは言った。

パパは教会で生き返り火葬をお願いして帰ってきた。クローンは土葬ではなく火葬をするのが一般化している。

翌日ルーラそっくりの妹がジョバンニの家にきた。

ジョバンニのママはジョバンニを生んですぐ病気で亡くなっていて、兄弟のいない寂しいジョバンニのためにパパは一時的にクローン派遣会社と契約している。妹が買取になるのかはパパが新しいママを見つけて結婚したときに決まるだろう。

ちなみにパパはクローンの使い道に正当性があり、派遣会社からの損害賠償はなかった。もちろん罪に問われることはありえないだろう。

とても昔は人権侵害とうるさかったらしいが、遺伝子操作によってクローンとしての本能を植えつけることに成功してからは人権侵害だと騒いでいた連中もいなくなった。


cf. 某正義の話 棒勇者の話 某鉄道の話

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よく話題になるのがクローンの人権。クローンももちろんまぎれもない人間である。この世界が上記のような常軌を逸した世界になることはまずないだろうけど、心なしか人間より下に見ようとしてない?自分の予備パーツで生かしておくとか怖い発想もあるよね。金持ちがクローンを脳死状態で保管する世界だね。

幸いiPS細胞のおかげでES細胞の人権問題も解消されたし、クローン維持だなんてしなくても臓器単体の再生治療がもうそこまで来ているから安心。

ES細胞(胚性幹細胞)は幹細胞の一つで、幹細胞とはすべての細胞になることができるスーパー細胞なんだ。ただし胚性というだけあって受精卵からしか取れないので、超広義では殺人と解釈することもできるため、ES細胞の研究には世界がうしろめたさと戦っていた。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は皮膚細胞を人工的に幹細胞に変身させたスーパーミラクル細胞。もう世界中が喜んだ素晴らしい発見。ちなみに日本の技術なんですよ、奥さん、すごいでしょ!


え?臓器にも心があるから臓器再生もダメだって?臓器の人権をどうするんだって?臓器ちゃんが死んじゃったから再生するんだよ?え?え?それでもだめだって? 臓器再生するような非人道的な人種は皆殺しだって?え? 矛盾してません? や、ちょ、やめて・・・や・・・め・・・・・・

まぁ、こんな正義をもった人だっているだろうから、臓器再生がすごいと一概にはいえないかもね。


閑話休題、クローンが下だって?バカ言っちゃいけない。きっと困るのはクローン以外の人間だよ。だってどうせクローンを作るなら優秀な人のクローン作りたいでしょ。まぁ、難しいこととか面倒なことはクローンに任せて、在来種は貨幣の概念から解き放たれた便利で自由な世の中で平和な暮らしを堪能すればいいのかな。クローンは無償の愛で在来種のために仕事をする。でも奴隷ではない、それが生きがいだと優秀なクローン達はいう。

素晴らしいウィンウィンだ。

在来種はクローンのペットで落ち着くってことだね。


結局、世間が向けるクローンという人工物への印象付けがとても難しいからこの先もきっと人間ではクローンを作らないでしょう。クローンを依頼した親から、子がクローンという事実を抜く記憶操作とかも怖いしね。

二人以上からとった遺伝子でクローンモドキとかできるようにもなるはずだけど、それはもうさすがに個人といっていいと思う。避妊治療の最終兵器になるね。となれば男同士でも女同士でも人工子供が作れるようになるってことだ。ただどうだろね、もちろん同じ顔や性別ができないようなランダム要素は必要になると思うけどね、しらんけど。


クローンは冒頭のような奴隷といった洗脳もできるし、クローンはスーパー人間という洗脳もできる。奴隷はもちろんひどいけど、一見良さそうなヒーロー扱いもひどいもんだよ。作った人の期待から外れたクローンはいったいどうなるのさ。

クローンは産まれたときからクローンとしての生き方を守ることになり、どうあがいても強制非個人化人生になってしまう。非個人化とはおかれた環境や役柄から自己暗示されて性格が変わってしまうことね。


あれ?おかれた環境から決まってしまう人生?

ん?・・・それって私じゃん!俺じゃん!君じゃん!

なんてこった、すでにこの世はクローンの大量生産工場だった、てへぺろ。


非個人化はだれにでも多かれ少なかれ確実にある。

ここだと日本人というイメージを守ろうとする非個人化計画が国を挙げて行われている。かつての日本の正義は天皇万歳、お国のために死んでどうぞ、名誉なこった。

「運命は意外と早くくるものね。」



生き方にも正義にも絶対はない。

非個人化からの抜け出し具合が成功や失敗や犯罪だね。


さぁ、もぅ一度クローンが自分のことだと置き換えて読んでみて。

君がもし自分はろくでもないと思っているとしても、俺はそれが君の周りがしくんだ非個人化計画だと知ってるから安心するんだ。

おめーはもっといいやつだって、どうしたら非個人化計画から抜け出して、本来の自分だったはずの理想に近づけるか、ちょっとずつでいいからいっしょに考えてみようぜ!


ただし犯罪以外の方法だぞ。


とかいいつつ、非個人化計画にどっぷりつかった俺も今日を細々生きてくるでな。

次回もよろしゅう。

四本足の日記

自由きままに。

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